債券投資における地政学リスクの新たな位置づけ
金利のボラティリティが債券市場の構造を変えつつあります。2025年以降、地政学リスクと債券市場のボラティリティとの関連性が強まっている背景を考察するとともに、タームプレミアム、債券のポジショニング、および投資機会への影響について解説します。
ハイライト
- 地政学リスクは、債券市場のボラティリティを左右する重要な要因として、その存在感を高めています。過去2年間で、両者の関連性は顕著に高まっています。
- 注目すべき点は、地政学ショックの件数や規模ではなく、その質的な変化です。近年のショックは、米国を発生源とし、かつ米国のインフレ圧力を高める要因となっている点で、従来の地政学ショックとは異なります。
- 従来の地政学ショックは、タームプレミアムや米国国債の利回りの低下要因となる傾向がありました。一方、近年の地政学ショックは、その両方を押し上げる方向に作用しており、債券市場にこれまでにない影響を及ぼしています。このことは、市場が政策金利の低下や金利ボラティリティの沈静化を織り込んでいるにもかかわらず、長期金利が比較的高い水準にとどまっている理由の一つと考えられます。
- ベアリングスでは、現在の市場環境を「予見可能なボラティリティ(Predictable Volatility)」と捉えています。地政学的な緊張の高まりによって市場が繰り返し変動する可能性はあるものの、最終的には緊張が恒久的にエスカレートするのではなく、段階的な緊張緩和へ向かうシナリオが最も可能性が高いと考えています。
- 投資家にとって、ボラティリティはリスクであると同時に投資機会にもなり得ます。ニュースのヘッドラインで上下する過度な市場変動は、特に金利が一定のレンジ内で推移する環境において、魅力的な投資機会を生み出す可能性があります。地政学リスクはもはや単なる脅威ではなく、投資機会へと変化しつつあります。
理論的背景
まず、タームプレミアムの概念を整理します。米国政府のデフォルトリスクが極めて低いと仮定すると、10年物米国国債の利回りは、期待仮説に基づく市場が織り込む今後10年間の政策金利の経路(複利ベース)と、投資家が金利変動リスクを引き受ける対価として要求する「タームプレミアム」によって構成されます。ここでいう金利変動リスクとは、10年間にわたり国債を保有するリスクであり、オーバーナイト金利での運用を毎日借り換えながら10年間継続する場合と比較した際に生じる追加的なリスクと捉えることができます。
26-5788776